20世紀を通じ、人間社会は、大量生産・大量消費・大量廃棄する豊かさや利便性を追求した経済活動やライフスタイルを送ってきました。その結果として、地球温暖化、オゾン層破壊や酸性雨による森林枯渇といった地球規模での環境問題から、身近なゴミ問題やダイオキシン問題まで、多くの課題が山積しております。
なかでも、企業は、化石燃料・鉱物を基に生産活動し、大量の廃棄物やCO2、有害物質を排出するなど、環境に対して直接的な負荷を与えております。
これまでのような「使い捨て社会」が、今後において継続できないことが明らかになった今、地球上の限られた資源を有効に利用し、地球環境の負荷を出来るだけ少なくする「循環型社会」に転換することが急務となっております。これは、廃棄物を出さない(Reduce)・出たものは再利用する(Reuse)・又は再資源化する(Recycle)の頭文字をとって環境の「3R」とも呼ばれております。
食品業界に係わる公害対策の一環として、1970年施行の「水質汚濁防止法」、1976年施行の「廃棄物処理法」、1993年施行の「環境基本法」が先行して法制化されておりますが、2001年施行された「循環型社会形成推進基本法」の直後に、食品リサイクル法が施行され、食品業界にとっては、更なる環境対策が義務付けされております。
弊社は、環境保全には出来る限り自社において環境対策を実施することが重要と考え、企業の責務として、この環境問題に様々な方法で逸早く取り組んでおります。
海洋投棄や焼却が問題視される以前から、生産工程で排出される食品残渣を大型の活性汚泥方式による排水処理施設で処理しております。ここでの余剰汚泥は、微生物発酵により最終的に堆肥化され農家の土壌作りに有効利用されております。排水については、国の定めた水質汚濁防止法の基準値及び、筑後川水系の上乗せ基準を当然ながらクリアしております。
生産工程から出る食品残渣をある期間分析したところ、相当量の食品成分が残渣として排出されていることが判明しました。そこで生産設備の再構築化を図かったところ、残渣の排出抑制に繋がり廃水処理設備の負荷軽減及び、食品としての歩留まりアップに著しく貢献しております。煮汁の濃縮及び、ボイラーの廃熱を利用した余剰汚泥の縮減も検討中です。
余剰汚泥については別方式での堆肥化を4~5年前から他研究機関と研究しており、更に産・官・学共同による食品残渣の他分野への有効利用を研究開発し、多方面で研究成果を発表しております。
近年のO157や黄色ブドウ球菌などの食中毒、狂牛病問題と一連の食品安全性への関心の高まりは、食品の安全性向上と品質管理の高度化の徹底が食品業界の急務となっております。これに伴い弊社では、業界に先立ちX線探知機の導入など様々な品質・衛生面での設備投資並びに教育を実施しております。更に、ISO認証取得/HACCP手法導入に向け準備・検討を進めております。
企業が環境対策に投資する費用よりも、対策を講じない場合に発生するであろうリスクの方が大きいと考えられておりますが、中小企業としては、環境問題をどのように「利益」に結び付けられるかが、一つの関心事であります。環境問題に取組む姿勢・方針として、コスト削減に重点を置くのか、企業・商品のイメージアップ及び法遵守に重点を置くのかの選択肢がありますが、現状の大手大企業の流れを見ると、イメージ戦略的な後者の意味合いが強いようです。しかしながら、中小企業としては、コスト削減に重点を置かざるを得ない経済環境にあります。
生産活動・事業活動における環境保全とは、環境負荷物質の排出を削減もしくはゼロにすることであり、これを分析・検討することにより、現状のシステム・設備の問題点を把握することができ、原材料の見直し、全体的な歩留りアップ及び、生産性の向上に結び付けることが可能で、コスト削減にも繋がります。
弊社は、環境問題を「企業を見直すチャンス・利益を生み出すツール」として捉え、将来的な企業の方向性を示す指針・理念としております。